電解研磨と不動態皮膜

ステンレスは、なぜ錆びにくいのでしょうか。

鉄は大気中では、錆びが発生して最後にはボロボロになって分解してしまいます。
大気中に酸素がある限り、この現象を避けることは出来ません。

鉄にCrを混ぜ、その割合が11%を超えてくると鉄錆びはほとんど発生しなくなります。
これはCrが鉄より非常に酸化されやすく、表面がCrの酸化皮膜で覆われるために、それ以上に酸化反応が金属内部へ浸透するのを遮断しているためです。
この現象を「不動態化」と言い、その酸化皮膜を不動態皮膜と呼びます。
ステンレスの場合、Crの含有量が多いほど不動態皮膜は安定なものとなります。

ステンレスは、表面にキズをつけても大気中の酸素によって直ちに不動態皮膜が再生、修復され、錆びの発生を防ぐことが出来ます。ステンレスはこの不動態皮膜がある限り錆びないものであり、何らかの理由で不動態皮膜が破壊され、再生されない状態となると、ステンレスといえども錆びることになります。


錆の発生したステンレス製品

製造されたステンレス製品の表面にある不動態被膜は、加工過程で発生する汚れの付着、金属片などの異物の突き刺さり、表面の変質など様々な原因によって不完全な状態にあります。この状態は上記の説明のような不動態被膜の破壊や、再生されない状態を引き起こしやすく錆の発生に繋がります。

錆を防ぐ強固で耐食性の高い不動態被膜を得るには、不動態被膜を不完全な状態にする原因を取り除かなければなりません。
単純に付着しただけの汚れであれば、洗浄や拭き取りする事で容易に取り除くことができますが、異物の突き刺さりや表面の変質などはそれだけでは除去できません。

電解研磨は、表面を溶解する過程で不都合な原因となっている部分を取り除き、Crを濃縮しながら酸化皮膜を生成していきますので、処理前よりCrに富んだ、より完全に近い不動態皮膜を得ることができます。
また、平滑化する事で汚れが付きにくくなり、洗浄性も高くなります。